この度、新著『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』を上梓しました。
いまインターネット上は、新型コロナパンデミック関連の情報であふれかえっています。そのほとんどがパンデミックを医学や科学、せいぜい経済の問題として捉えたものです。
そんな中この本は、日本や諸外国の感染症への備えや対策を「国防」の観点から、つまり「感染症から国を守る」という、ちょっと変わった視点で書いた本です。
言ってみれば「国防としての感染症」の本で、内容的にはサブとメインが逆なのですが、国防問題としての新型コロナを考える本ともなっており、とにかくは手に取っていただければと思います。
感染症学は、植民地や戦争といった歴史や記憶を引きずる「支配者の学問」です。そこには科学や医学だけでなく、政治的なダイナミクスで動く世界が広がっています。
パンデミックや生物兵器テロといったバイオセキュリティへの備え、ワクチンや新薬の開発、それらを用いた外交、諜報や情報防衛を含む、駆け引きと裏切りの世界です。
わたしはそういったすべてをきれいに包みこむ、WHO(世界保健機関)というところで仕事をしていたこともあります。そのため、実は、エボラやMERS、ジカ熱などが流行した際にも、WHOからの視点で書いた記事がたくさんあります。
わたしのことは子宮頸がんワクチン問題をめぐる記事や本を通じて知ったという方も多いと思いますが、わたしが執筆活動を本格化させるきっかけとなったのは2014年のエボラ出血熱。以来、「パンデミック物」はわたしの十八番です。
この本は、わたしのそういう作品は知らないという人や、紙の本で読みたいという人、わたしのことをテレビや雑誌で見たことがあるけれど書いたものは読んだことがないという人にも手に取っていただきやすいよう、この度は安価でシンプルな新書の形で出版することにしました。
この本は、毎日を個別のニュースに一喜一憂して過ごすのでなく、パンデミックという歴史の大場面を「生きている」自分を感じたい人に、ぜひ読んでほしい本です。
いっしょに歴史を生き延びましょう。